“大豆は乳がんのリスクを増やすのか減らすのか?

大豆製品のがんへの影響、特に乳がんへの影響、エストロゲンへの影響については

よく議論されていますね。

このブログでは、少し難しい内容をまとめていますが

ご自身にとって健康効果のある食品を選択される際、参考にしていただければ幸いです。

さて、どうして医師の中には大豆を控えるように助言する者がいたり、

反対に大豆を摂った方が良いと助言する者がいるのでしょう。

これはホルモンのエストロゲンと関連の強い病気に

大豆に含まれる植物性エストロゲンが関連付けられ、しばし混同されるからです。

大豆はエストロゲン受容体に結合するイソフラボンという植物性エストロゲン(ファイトエストロゲンとも)を含んでおり、豆の中でも特殊な存在です。

しかし植物性エストロゲンは、名前こそ似ていますが人間のエストロゲンと同じではなく、

一般的に活性がはるかに弱いものです。

植物性エストロゲンは、結合する受容体の選択性が高いため、選択的エストロゲン受容体モジュレーターと呼ばれています。

エストロゲン受容体モジュレーターとは

体の組織にあるエストロゲン受容体の種類によって、

イソフラボンが弱いエストロゲンのような作用を持つか、

抗エストロゲンの作用を持つかが決まります。

これまでの歴史では長年にわたり医師はエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの患者に対し、大豆製品を避けるよう警告してきました。

つまりこの指示は植物性エストロゲンがヒトのエストロゲンと同じように作用し、がん細胞の増殖を促進するのではないかという懸念に基づいていました。

しかし、以下にたくさんリンクを添付しております近年の研究では

生殖細胞(乳房や子宮の組織など)では、イソフラボンは抗エストロゲンとして作用し

骨芽細胞(骨を形成する細胞)では、弱いエストロゲンとして作用する

(要するにエストロゲンの影響を避けたい場所ではエストロゲンの影響力を弱め、

本来エストロゲンが必要な場所ではエストロゲン風に役立つ😂)ので、

どちらの場合においてもイソフラボンの摂取が有益であることが示唆されます。

現在確認できるエビデンスでは、生涯にわたる大豆の摂取が、乳がんの予防や乳がんの予後の改善に役立つ可能性が示唆されています。

以下、大豆と乳がんに関する知見がまとめてありますので

(まとめたのはプラントベースのダイエティシャンであるブレンダデービス氏です)

どのような論文があるかよく確かめて見たい方はリンク先へどうぞ。

特に医療関係の方は一度読まれた方がいいと思います。

医療従事者が若い頃に勉強してきたであろう内容と

現在わかっている結果に相違があるからです。


”幼少期と思春期の大豆摂取は生涯の乳がんリスクを低下させる件”

参照

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19318430/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11352858/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12189192/

https://www.semanticscholar.org/paper/Adolescent-dietary-phytoestrogen-intake-and-breast-Thanos-Cotterchio/890bf368c37ebe223b09ee17e0a92cd536289718

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19403632/

アジアの集団では、乳がんリスクと大豆イソフラボン摂取量の間に有意な逆相関が存在する(大豆が多いほど乳がんになりにくい)が、欧米ではその関連性がみられない件”

参照

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19403632/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20181808/

https://www.nature.com/articles/6604448

https://www.researchgate.net/publication/10702885_Soy_Isoflavones_and_Breast_Cancer_Risk_in_Japan

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ijc.23141

大豆とアジア人の乳がんリスクの逆相関は、閉経前の女性よりも閉経後の女性の方が強い件

参照

https://www.nature.com/articles/6604448

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16595782/

ほとんどの研究では、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんでタモキシフェンを使用していても、大豆イソフラボンの摂取によって乳がんの再発または乳がんによる死亡のリスクが減少するか、影響を受けないことが示されている件

参照

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21357380/

https://www.cmaj.ca/content/182/17/1857

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19996398/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19221874/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18006917/

https://link.springer.com/article/10.1007/s10549-004-6019-9

https://link.springer.com/article/10.1007/s10549-020-05957-z

一方、韓国のある小規模な研究では、大豆イソフラボン(主に黒大豆由来)の大量摂取が、HER2陽性乳がん患者のがん再発リスクを増加させるが、HER2陰性乳がん患者のリスクはかなり強く減少させることが示された件

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22211813/

中国人女性とアメリカ人女性の両方を対象としたプール解析の結果、摂取量の多い人(イソフラボン10mg以上)は、乳がんで死亡する確率が17%低く、乳がんの再発が25%低いことがわかった件

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22648714/

中国とアメリカの研究のメタアナリシスでは、大豆食品の摂取量が最も多い場合、最も少ない場合に比べて、死亡率が16%減少し、がんの再発が26%減少することが示されました。閉経後の女性では、大豆を多く摂取することで、ER-がんでは36%、ER+がんでは35%、再発が減少したことが示された件

http://www.koreascience.or.kr/article/JAKO201321251180903.page

大豆食品のがん予防効果は、イソフラボンの含有量によるものと考えられる件

https://www.researchgate.net/publication/47566629_Is_Soy_Consumption_Good_or_Bad_for_the_Breast

BRCA1およびBRCA2遺伝子キャリア(乳がんリスクを高める遺伝性変異のキャリア)では

大豆製品の摂取量が最も高い四分位の場合、乳がんのリスクが61%減少することと関連してるが肉類の摂取量が最も高い四分位のキャリアにおいては、乳がんのリスクが約2倍となった件

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24153343/

まとめ

これらのデータを参考にすると

大豆の摂取は乳がんに対して保護的だと結論づけることができる。

または

保護的ではなかったとしてもリスクに悪影響を与えない。

と判断できるのではないでしょうか。

乳がんの再発や死亡のリスクは、大豆の摂取によって減少すると言えると思います。

豆腐や豆乳など伝統的な大豆食品の適度な摂取=

つまり1日2皿程度の量が最も有効なようです。

大豆の摂取は、乳がんだけでなく前立腺がんのリスク低減や前立腺がん細胞の増殖抑制にも関連しています。

今回は遺伝子組み替え大豆や、IFG-1、大豆から精製した大豆タンパクの影響、

甲状腺の病気と大豆の関係などについては触れず、

未加工の大豆や加工程度の低い大豆製品がエストロゲン関連の病気、特に乳がんに悪影響を与えるのかどうかに絞った記事になりましたが、

大豆はこの他にも議論が多い食材なのでその他のトピックでもまた改めたいと思います。

最後に

大豆は体に良い栄養素を多く含み優れた食材だと個人的には思い、オーガニックの大豆や

豆腐や豆乳などの大豆製品を私は食べています。

しかし、食べなければ健康を維持できないような必須食材ではありませんので、嫌な方は別に食べなくても問題ないと思います👍


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