大腸憩室炎とその段階的な食事改善法
大腸憩室炎を繰り返す家族のために食事の改善を検討されている方向きの記事です。
ご参考になりましたら幸いです。
憩室があるという事と憩室炎を起こしているという事は異なります。
憩室があっても症状があるとは限りません。
通常は大腸内視鏡検査の際に偶然発見されることが多いです。
憩室を持つ人は多いものの、憩室に病的な炎症を起こす憩室炎を発症する人は全体の約5%です。
100年前と比べて憩室が非常に多くなっていることから、過食や運動不足といった現代的なライフスタイルが関連していると考えられます。
再発予防のためには、適切な食事への変更と運動などが重要なポイントとなります。
症状と診断
憩室が炎症を起こすと、突然の激しい下腹部痛(通常は左側)と、便の不調(下痢または便秘)が起こります。痛みは食事を摂ると悪化し、排便後に消えてしまうこともあります。また、吐き気や嘔吐が起こることもあります。発熱は、炎症が深刻であることを示す明確なサインです。血液検査では、炎症(CRP)の値が上昇していることがよくあります。急性憩室炎の診断を確実にするためには、専門医による腸管超音波検査やコンピュータ断層撮影(CT)が必要です。
合併症
炎症時には急性の合併症が起こることがあります。
病気の経過を注意深く観察し、悪化の兆候を早期に発見し、タイムリーに対策を講じる必要があります。
急性合併症。(炎症が周囲の組織に広がること。)
憩室穿孔(腸管穿孔):炎症を起こした憩室の薄皮が破れ、便の残留物が通常無菌の腹腔内に入り込む。
膿瘍形成(空洞に膿が溜まること)
腹膜炎
敗血症による生命への危険
長期的な合併症、特に炎症を再発させた場合。
腹腔内の癒着
狭窄(腸が狭くなること)
瘻孔(ろうこう)の形成(炎症などによって生じ た、皮膚や粘膜と臓器をつなぐ、または臓器と別の臓器をつなぐ異常な管状の穴)。
瘻孔が例えば膀胱につながっている場合、腸内細菌が繰り返し膀胱炎や尿路感染症を引き起こす可能性があります。
治療
急性憩室炎とその合併症は、その重症度に応じて治療されます。軽度のコースでは、身体を休め、流動食(例えば、ブドウ糖入りのお茶や透明なスープなど)に変更することで、経過を穏やかにすることができます。時には下剤の服用も効果的に利用されます。
以前は憩室炎が疑われた場合、詳しい診断をせずに抗生物質が処方されていました。
抗生物質は有益な腸内細菌を減らし、腸内細菌叢の自然なバランスを崩しまうので、
今ではメリットよりもデメリットの方が多いとも考えられるようになりました。
しかし合併症のリスクが高い人では腎臓病や免疫不全などの場合には、抗生物質の投与が必要になります。炎症が収まってくれば、慎重に食生活を開始しし始めます。
外科的治療
以前は2回目、3回目の炎症が起きたら手術で腸の患部を切除するのが標準的な方法でした。
しかし今では手術の推奨はより慎重になっています。
手術が必要かどうか、いつ手術が必要かはケースバイケースで判断されます。
治癒後は、憩室が再び炎症を起こさないように十分な運動と、段階的に繊維質の多い食事を心がけます。関節が悪い場合も風呂で腹部を動かすなどの運動をしましょう。
炎症の原因
慢性的な食物繊維の少ない食事が一因になっているは確かです。
食物繊維の少ない食事により便の量が少なく、硬くなり、腸内に長く留まるようになり
普段は無症状の憩室に便が長い間留まることにつながります。
(排便時)食物繊維によって排便が促進される代わりに、腹圧が高まります。
憩室の組織壁は薄いことが多く、血管が引き伸ばされて血行が悪くなり、腹圧によって憩室が形成されたりします。
炎症のリスクを高める物
食物繊維を含まないまたは少ない食品(つまり全ての動物性食品、または植物性加工品)
肉
喫煙
アルコール
運動不足
太りすぎ
薬: 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、イブプロフェンやジクロフェナクなどの鎮痛剤)、オピオイド(強力な鎮痛剤)、コルチゾン、免疫抑制剤。
種子やナッツ、穀物が憩室に絡みつき、憩室炎を引き起こすというのは昔話で、現在では大規模な研究で反証されています。
食物繊維が炎症を防ぐ
高食物繊維、低肉食の食事をすることで、憩室炎のリスクはほぼ半減します。
ベジタリアンやビーガンの人は、炎症を起こしている憩室を持っている人が非常に少ないことがわかっています。
憩室炎時の食事に関して
腸が急性の炎症を起こしている最中は、繊維質の多い食事を摂るべきではありません。
また、外科手術の直後は、腸を温存する必要があります。
常に重要なのは、「よく噛むこと」です。
第1段階:断食(ファスティング)
炎症がひどい場合は、食べ物を食べてはいけません。水、ハーブティー、脂肪分のないスープなどを飲んだり、ほとんどの場合、憩室炎は入院治療となり、栄養剤の非経口投与や点滴が行われます。
第2段階:低繊維・低脂肪食
食事療法を開始した最初の数日間は、以下のことが推奨されます。
無糖のハーブティー(特にカモミール)をたっぷり。
野菜ジュース、麺類、米、にんじん、ポテトなどを入れた低脂肪のスープ、 ラスク、
薄めのパン、白いパン蒸して絞った野菜(にんじん、かぼちゃ、ほうれん草)、
ピューレにした果物、低脂肪の植物性ヨーグルト
第3段階:少量・低脂肪、少しずつ全粒を心がけた食事へ
炎症が完全に治まるまでは食事に段階的に食品を加えていきます。
1日に6~8回に分けて少量の食事をする。
とても熱いものやとても冷たいものを避ける。
とてもスパイスの効いた食べ物。
脂肪で揚げた食品(フライドポテト、カツ、チップスなど揚げ物やスナック菓子)
カスタードクリーム、チョコレート、クリーム(ケーキ)などの脂肪分の多い食品。
脂肪分の多い肉類、ソーセージ、サラミ、内臓肉。
脂肪分の多い魚特に:ウナギ、サバ、ニシン、サーモン。
卵、クリーム、サワークリーム、牛乳、ヨーグルトなど、脂肪分の高い乳製品。
炭酸飲料、コーヒー、紅茶、アルコール類。
(※栄養の吸収を阻害する性分を含むドリンク)
豆類、キャベツ、長ネギ、玉ねぎ、ニラなどは健康的な食品ですが
このような鼓腸性野菜はこの段階では注意します。
未熟な果物、ドライフルーツ、ナッツ類も高食物繊維なのでこの段階では注意します。
第4段階:未加工の植物性食品の多様性、食物繊維の多い食事への移行
炎症が治まったら、食物繊維の多い植物性の食事に徐々に変えていきます。
この変化を導入するか否かが再発防止に大きく関連します。
炎症が治癒した後は腸内フローラをサポートするため、食物繊維の多い食品また、味噌、ザワークラウトなどの発酵食品、オメガ3脂肪酸を含む食品、レジスタントスターチ(熱したあと冷ましたデンプン質)を含む食品、未加工の植物性食品をできるだけたくさん取り入れた食生活を心がけます。
健康な腸を維持する為には運動も大切なので、毎日30分程度は散歩をしましょう。
ナッツや種子は必要に応じてよく噛んだりすりつぶしたりして使います。
目安の食物繊維量
成人の場合(ドイツでは)1日30gの食物繊維を摂ることが推奨されています。
繊維は消化管の中で膨らむので、必ず水分と一緒に取り入れましょう。
注意:1日で食物繊維の量を大幅に増やして腸に負担をかけないように気をつけてください。
体が徐々に変化した食べ物に慣れていくには、まず腸内フローラが適応しなければなりません。
<食物繊維の摂り方>
食物繊維の摂取量を最適化したい方はグラム単位を数えるのではなく、以下の経験則を参考にしてください。
①穀物はより全粒粉のものを選ぶ、またはできるだけ多く取り入れる。
全粒粉、全粒粉パン、全粒粉パスタ、穀物ミール、穀物フレークなど。
亜麻仁、小麦ブラン(ふすま)、オートブランは特に食物繊維が豊富です。
②1日複数回野菜や果物を食べることに加え、一握りのナッツを食べると、タンパク質と良質な脂肪を摂取できるだけでなく食物繊維も摂取できます。またキノコ類や豆類も忘れずに摂取しましょう。
次の表は、食物繊維の多い食品の例です。
炎症が治った後は、再発防止に備えた食生活を心がけます。
キーワードは未加工の植物性食品の多様性です。
それらが腸内環境を整え抗炎症物質を生産する良いバクテリアを増やす事にも役立ちます。
買い物時、料理時、盛り付け時に未加工の植物性食品の多様性を思い出し、
食物繊維をより多く取り入れるためにとんな食品が自分にとって取り入れやすいかを検討しましょう。
★ゴボウ
★菊芋
ひよこ豆
キドニービーンズ
白インゲン豆
アーティチョーク
★サイリウムハスク(オオバコ外皮)
グリーンピース(冷凍)
★チアシード
芽キャベツ
パプリカ
ポップコーン(例、家で手作り)
とうもろこし
ライ麦全粒粉パン
★小麦ブラン(小麦ふすま、小麦ブランを使った製品など)
スペルト全粒粉パン
★オートミール
プンパーニッケル(食物繊維の多いドイツパン今では日本にもある)
ピーナッツ
ラズベリー
ライ麦50%入りの小麦のパン
ドライマンゴー
キウイ
★ココナツファイン(ベーキングに使うココナッツ)
マカダミアナッツ
ヘーゼルナッツ
★オートブラン(オートブランを使った製品など)
ドライプルーン
ドライアプリコット
クルミ
ピスタチオ
ごま
ドライアップル
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